ponの読書日記

『カード師』 中村文則 2021年刊 朝日新聞出版 ★☆☆☆☆

これは、初めて中村の作品のなかで、つまらないと思った。タロット占い師とポーカー賭博のカード師をやっている男が主人公だが、彼はいつもの中村作品に登場する男とほとんど変わらない。

 両親の離婚により、養護施設で育った少年がトランプマジックを覚えて、占い師と賭博カード師として、「真面目に」働いて小金を貯めていくが、・・・。あるとき、やばい依頼を受ける。・・・・・・・

 彼は小学生の頃に、悪魔を呼び出して望みをかなえるという場面は、面白かったが、脳内に妄想の悪魔を持って生きるひとは、強くなれるのだろうか。

 結末もあっけなくて、これは期待外れだった。

急がなくても良いから、読んだことのない物語を中村には望みたい。流行作家として、次々に原稿依頼が来るのかもしれない。しかし、彼が描きたいものを見つけて、ゆっくり構想を練り落ち着いて書いたものを、私は待ちたい。